〝南〟poem

彼女はつねに彼女と彼女以外との距離の計測にかまけている

 

群青色にほぼ近い蒼い瞳と蒼い口紅

髪は染めたものとは微妙に違う

もっと自然な陽に焼かれたような色

膚も幾らか焦げたような色をしていた

が、実のところ彼女は韓国の人である

服とブーツは至ってカジュアルなもの

しかし時たま星のようなピアスや宝石を身につけていた

銀というより銀河を想わせるそんな奴を

時たま

 

漆黒に近い黒い道

彼女のかつて暮らしていた街で

そこを再び訪れて唯一彼女と何か馴染んだものである

街そのものは無計画な壁と窓と屋根の連なり

それ以外の何ものとも思われなかった

漆黒に近いちょっと意外なほど黒い道

そこだけが彼女には異質ではない

そのように思われもした

 

彼女は思う

その道を他の場所と同様にしてただ単に通過しながら

こう思う

〝少し冷たい石の温度。冷たいけど南なの〟

 

 

                                                      (澁澤政裕)

入院中に書いたものに少し直しを入れたもの。

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