poem, 足跡(そくせき)第一稿

〝主よ。汝……〟

 

台風の目

つまり平和と黙考の中心地点

〝病院〟は

そこに曖昧に浮遊している。

狂人たちを収容しながら何故か唯一正気を保ち

これはどういう不条理だろう

常人たちの暮らす周辺区域のほうが気ちがいじみた混沌の渦中にあって

我を忘れ

道理を忘れた狂騒のうちに自ら向かいそこへ埋没

段階的な正確な歩みを伴いながら着々と滅びゆくのだ。

 

私たちは時として忘れてしまっている。

多くの人の歩行はむしろ退化へと向かうということを。

そうしてその人たちの魂もまた

最初のうちは麗しく磨かれていたことを。

 

そしてとうとう〝病院〟は計り知れない何らかの意志によって

隔離聖別された。

だがそれが狂人たちに何の関わりがあるだろう。

彼らは今日も自らを生きることに忙しいのだ。

ただ一人

何か祈りを捧げた者があったが

この人は何を願っていたのだろう。

当人にもそれが何かはよくは分かっていなかった。

 

月と太陽とは今も運行している。

破綻は最小限でひとまずは許された。

そのように捉えれば希望はまだ廃れてはいない。

 

〝主よ(しかし私は神など余り信じない)

主よ。汝の愛を、いまひとかけら〟

 

 

                                                      (澁澤政裕)

初稿。時間を置いて直しを入れたい。

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