此処 (ここ)

長い長い悪夢の中に迷い込み、それでもなお自分を捨てず、希望を捨てず、さ迷いながら出口を探すことを諦めず、いつとはなしに光明が射し、それは実際最初のうちはぼんやりしたほのかな光、その光を見失わずに、段々とそこへ近づくその歩みを休まずに、そしてようやく眼ざめの時を迎えよう、迎えようというその時に至って、以前より少し大人になっている自らを見いだしたのでした。おれを慰め助けるために支えとなってくれた人たちがいた。その人たちはみな他人。だから自分も信じていようと。人は一人でなどは生きてはいない。そのことなら前々から知ってはいました。出し惜しみない優しさは必ずや報われる。そのことをおれは知らなかったのです。

 

 

                                                    (澁澤政裕)

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